小中学時代の友人にリョーゴ(仮名)という奴がいた。
小学生の頃は休日にポケモン対戦などして遊ぶ仲だった。(催眠分身メガヤンマに一生嵌められてた)
僕とリョーゴは同じ中学校に進学し同じ部活に入部した。
必然に僕とリョーゴの帰宅時間は同じタイミングとなり自宅の方向も同じだったため、一緒に帰ることが多かった。
その日も同様にリョーゴと帰路を共にしていたのだが、 彼はなんの脈絡もなく僕に問う。
「パンティ?」
唖然とする僕。リョーゴは続ける。
「パンティ?」
(発音は「パン↓ティ↑?」早口で言うのが味噌)
意味はわからないが、質問をしてきていることは理解できる。
しかし、ここで「YES」と答えようものなら、
「おまえパンティなのかよ!!」「おまえパンティ履いてんのかよ!!」等のしょうもない返答なのは容易に想像ができる。
となると、答えは「NO」一択だ。
僕が「ううん」と答えると、リョーゴはさらに続ける。
「パンティ?」
RPGの「YES」と答えるまで同じ質問を繰り返すやつだ…。
一応、何度か「NO」を返すも、返ってくるのはやはり「パンティ?」
何度かのノーパンラリーの後、渋々「うん…」と答える。
「オッケーーーイ!!!」
リョーゴは叫びながら僕に肩パンした。
やり切った顔をしているリョーゴ。
痛いし訳がわからないしでキレ散らかす僕(当然)
この通称「パンティパンチ」は中学時代において幾度となく行われることになる。
〜よくわかるパンティパンチ〜
- 対象に「パンティ?」と唱えた時、 対象が「YES」を意味する言葉を発するまで「パンティ?」を繰り返す。
- 「パンティ?」に対して対象が 「YES」を意味する言葉を発した時、対象に肩パンを行う。
- 2の肩パン時、「オッケーーーイ!!」と叫ぶ。
上記のルール上、「パンティ?」と聞かれた時点で負け確だ。
〜パンティパンチQ&A〜
Q. 無視すれば?
A. ルール1に則り、帰宅中の間「パンティ?」がループします。
そんな環境最強構築に怯える日々であったが、
ある日、この最強構築の『弱点』に気づく。
『最強』であるが故の『弱点』
それは"先制パンティパンチ"だ。
「パンティ?」とこちらが先に唱えてしまえば、
以降はルール通りYESをループで引き出し、拳を肩に叩き込むことができる。So easy…
その日の帰り道、僕は最強構築を引っ提げてリョーゴに先制した。
「パンティ?」
勝利を確信した刹那、リョーゴは口を開く。
「パンティ?」
嘘だろ???
パンティにパンティ被せていいのかよ。
ただ考えてみれば、当たり前のことだ。
最強構築に対抗しうるは最強構築だと結論づけたのは自分自身ではないか。
僕も、そしてリョーゴも、振りかざしたパンティをしまうことなどできなかった。
「パンティ?」
「パンティ?」
「パンティ?」
「パンティ?」
「パンティ?」
「パンティ?」
「パンテ…
「パン…
……
…………
………………
「もういいわ…」
「オッケーーーイ!!!」
負けた。
決してリョーゴに根負けしたのではない。
中学生男子2人組が一心不乱にパンティパンティ言ってる様子に奇異の目を向ける人々に屈したのだ。
その後、リョーゴは今回の戦いを経てパンティパンチを完全究極体へと進化させた。
〜よくわかる 真・パンティパンチ〜
- 対象に「パンティ?」と唱えた時、 返答の言葉の意味合い、そもそも返答の有無に関わらず、対象に肩パンを行う。
- 「パンティ?」を唱えられた対象がリョーゴの場合、リョーゴは割り込んで相手に肩パンを行う。
- 1と2の肩パン時、「オッケーーーイ!!」と叫ぶ。
どうやったってリョーゴが肩パンする未来へと辿り着くため、無駄な工程は省かれた結果
全ての「パンティ?」からリョーゴの肩パンへ直接チェインするようになった。
しかし、完全無欠となったパンティパンチだったが、ある時期を境に静かに終わりを告げることとなる。
中学2年の末、「受験」という壁が立ちはだかる。
もちろんリョーゴも多分に漏れず、その影響を受ける。
リョーゴは学習塾に通い始め、帰宅時の会話は成績や勉強についての話題が多くなった。
それと反比例しパンティパンチが行われる頻度は減っていき、とうとう3年の春には完全に消滅した。
なんともあっけない幕切れではあったが、平穏を取り戻しハッピーエンド。第3部完!
『今、私がパンティパンチを始動したらリョーゴはどんな反応をするのだろう?』
互いに志望校に合格し卒業を間近に控えたある日、そんな疑問がふとよぎる。
受験の楔は解かれて僕たちを縛るものがない今、パンティパンチは再び目覚めるのではないか。
仮に復活したとして、別の高校へ通うのだからリスクはないんじゃないか?
居ても立っても居られなかった。
確認せずにはいられなかった。
下校時間になりリョーゴを待ち伏せし、出会い頭に問いかける。
「パンティ?」
「あー…、俺、そういうのもう卒業したんだよね(嘲笑)」
身構えた肩に拳が叩き込まれることはなく、
僕は肩透かしを食らった。